Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
06☩side悠里☩
☩ ☩ ☩
所は『ASTRO』
基本僕と久保塚君の二人だけの試作室のドアが小さな音を立てて開けられた。
「様子はどうだ。」
そう言って入ってきたのは須藤。
「ごめんね、勤務中なのに久保塚君を私用で使っちゃって。」
「ま、状況が状況だ。仕方ない。」
現在久保塚君はパソコンを操作中だ。
最近は3Dコピー機も扱う為PC作業も珍しくは無いけども、今、彼が興じているのはネットサーフィン。
美久の名前が勝手に載せられたサイトを探し出して貰っている。
昨日、名取さんから連絡が入った。
『恨みを買うような子じゃないから、アンタ絡みじゃないかしら。心当たりなんて…』
あると言えばあるか、と追及をあっさり引き下げた。
その通り。
僕だって恨みを買うタイプな訳じゃないけども、目立たないタイプでもないから逆恨みなら無尽蔵というものだ。
それこそ特定のしようがない。
とりあえず『NANATORI』でも監督の木戸さんをはじめ社員総出で問題終息に向けて尽力してくれている。
僕としては歯痒いけどもコチラでは久保塚君に一任している。
久保塚君はオタクが高じてこの会社に入ってきたような子なので、僕なんかよりずっとPCの扱いに長けているんだから。
どう言い繕ってみてもプライベートな事だし、あまり大人数でサボっていて上司にでも見咎められては困るからね。
代わりと言ってはなんだけど、僕が久保塚君の仕事を請け負っている。
無論、定時に帰るために自分の分まで。