Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
焦りの見えるそんな前置きがあって、報告を終えて、電話を切った。
………やれやれ、ホントまずい事になっちゃったな。
溜息を吐きつつ僕の言葉を待っている二人の―――主には須藤に話しかける。
「美久の職場に美久を訪ねて女性が現れたらしいんだ。一連の悪戯の犯人に心当たりがあるらしい、って。それで“美久”はその女性と共に店から出て行ってしまったらしい。」
は?と言ったのは須藤。
「男ならサイトの閲覧者で、何か知ってる風を装って連れ出すのが目的でしょうけど、これが柏木さんに想いを寄せる人間の逆恨みなら犯人が女性である可能性はかなり高い……。その女性がズバリ犯人って事は十分ありえますよね。」
その通りだね、と久保塚君の冷静な見解に僕は頷く。
「………ちょっと待て。その店から出てったって言う“美久”ってのは誰の事だ。」
ああ。やっぱり流石だね、須藤クン。
そこに着目しましたか………
「うん。実はね、冷やかし共を一掃すべく名取さんが昨日から美久のプレートを付けて店頭に立ってたらしいんだ。」
言った途端、ダンッ!とコーヒーカップをテーブルに叩きつけて須藤がテーブル越しに身を乗り出してきた。
「貴様っ、何でそんな危険な真似をさせてんだ。というか、何でそれを俺に言わなかった。」
「ヤダな。僕がやらせた訳じゃないって…」
「黙認したなら同罪だろうがっ!」
何故言わなかったかって?
勿論、こうなるのが分かってたからだよね。
普段から不機嫌そうではあるけれど須藤のここまでキレた姿を初めて見た久保塚君なんか、ビックリし過ぎて固まっちゃってるじゃないか。