Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
そう、僕が今作っていたのは久寿軒さんのフィギア。
我ながら、とても似ていると思う。
「こんな風に私を作って下さるなんて………」
台座さら持ち上げたフィギアを見詰めてうっとりしていた久寿軒さんの顔が一瞬にして凍りついた。
僕の力を入れた拳の中で粘土は無残に形を変え指の隙間から捻りだされ―――
ついにはうっすら微笑みを浮かべた彼女の頭部が千切れてぼとりと床に落ちた。
さて、自分に良く似た人形が無残に潰されるのはどんな心境なんだろうね。
久寿軒さんを含め誰もが息を呑み緊迫した場で、僕はニコリと微笑んだ。
「ああ、命拾いしましたネ、久寿軒さん。古来より人形は人間に降りかかる厄害の身代わりになると言われますものね。………でも次は無いですよ。」
そう、これは警告。
勝手に人の身辺調査やら戸籍まで覗いて、挙句に美久を誤解させるような事を言って傷付けて。
「仕事上での我儘はともかく、僕のプライベートに関わるならご容赦致しません。」
次こそ、身代わりの人形はない。
小刻みに震えていた久寿軒さんは逃げるように部屋から去った。