Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
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「たっだいま~………って、美久っ、ど、どーしたの!!」
昨日。
早番で早く帰って来ている筈の美久に想いを馳せながら喜び勇んでリビングに飛び込んだ悠里は狼狽気味に叫んだ。
美久がソファーでぐったりしている。
「ぅぅ……お帰り、悠里……」
脂汗に滲んだ蒼い顔でそれでもふにゃりと笑ってみせる美久に、悠里は察した。
ああ、月一の女の子の日。
普段はそれほど酷くもないけれど、稀にアルマゲドン級に見舞われるのだ。
「ごめんね?…夕食のお支度、まだ……」
「あ゛ー、そんなのいいから!美久はちゃんと温かくして大人しくしてて。」
果敢にも起き上がろうとする美久を悠里はタオルケットでくるんでソファーに戻した。
「そんなんじゃ美久も碌に食べれてないよね。今すぐ作るよ。」
「……食欲ない。」
「ダメ。貧血になっちゃうから。それにお薬は空腹で飲んだら胃に悪いでしょ。」
びしりと指摘しながら悠里は早速エプロンを付けて冷蔵庫を物色し始める。
消化が良くて栄養価の高い物。なおかつ良質な油分であれば尚良し。
鶏肉の出汁を効かせたあっさり目の鶏うどんにしよう。
そうと決めて悠里は早速作り始める。
「―――って、美久何してんの!?」
調理を始めて暫く立った頃、後ろの気配に気付いた悠里は振り向いてぎょっとする。
美久が財布を片手にのろのろと玄関へ向かおうとしている。