Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
久寿軒さんを突き飛ばした瞬間、身体に重い衝撃が加わって、アスファルトに倒れた。
どう考えても車にぶつかった衝撃の方が遥かに大きいと思うのに、アスファルトを滑った拍子に擦れた肌の痛みの方がリアルなのだからヒトの感覚は不思議だ。
やけにクリアに見える光景をボンヤリ見詰めながら思う事と言ったら……
―――あー…
こんな所で寝てる暇があるなら美久に会いたい。
そう思い立ったら是が否でも会いたくなって、会えないもどかしさに胸が軋む。
美久は僕と別々でヨカッタって言うけど、やっぱり僕はそうは思えない。
いつでもどこでも、こんな時ですら、一緒にいたい。
離れている瞬間が狂おしくて堪らないんだから。
血の気の引いた顔を引きつらせて腰を抜かしている久寿軒さんが視界に入って、彼女の言葉が頭を過ぎる。
『お姉さんを好きだというのは幼い頃から大切だと思い続けていた気持ちを錯覚してるだけです。』
美久どうしよう…苦しいよ。
頭が可笑しくなるんじゃないかって程美久が好きで、細胞単位で美久を求めてる。
この想いがいつか美久を追い詰めたとしても、もはや僕の意志では制御も出来ない。
この苦しさは出会わなければ知らずに済んだ?
純粋に誰かを慕う幼い頃じゃなく、もっと世界の広がった大人になってから出会ってたら、結果は違ってたのかな?
――――美久、大好き。