Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
あの時、麗那さん声は聞こえている筈なのに真っ白になった頭を右から左に抜けて行った。
悠里が……事故?
茫然と立ち尽くすだけの私を現実に引き戻したのは肩を握る強い力。
『しっかりしろ柏木!オマエがそんなのでどうするんだ!』
力強い瞳にはっとして反射的に何度も頷いた。
その後、乗れと車に乗せられて病院へ。
余程私の様子が危なっかしげに見えたのか、中まで木戸さんは付き合ってくれて。
「……あぁ。貴方が木戸さんですか。」
何やら複雑な顔で納得する須藤君に私は首を傾げる。
それに応える木戸さんも少し微妙な顔付きで。
「……もし都合が悪ければ、俺は同行を辞退しますが。」
「いや…。寧ろ居て頂いた方が宜しいかと。」
チラリと私を見た須藤君はそう言って、さっと視線を前に戻した。
「身内が事故に遭ったとあらば動揺もするでしょうし、頼れる存在が有るのは心強いものですからね。」
何かの含みを匂わせる須藤君のその言葉にざわりと不安が揺らめく。
「す、須藤君……悠里の容体は、そんなに酷い、の?」
不安で見上げる私に須藤君は「…いや」と言葉を続けた。
「俺も今来たばかりでなんとも言えないが……不幸中の幸いというか、外傷は骨折くらいで命にかかわるものではないようだ、が―――…」
そこまで言い差した須藤君は「ここだ」とある病室の前で足を止めた。