Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
逸る気持ちを抑えて病室のドアを開けた。
悠里はいた。
個室であるらしく小さな部屋に他の患者さん用のベッドもなく、窓際に置かれたベッドで悠里は背凭れに身を預けるようにして上体を起こしている。
ギブスの嵌められた足が吊られて、腕から肩にかけても包帯で巻かれて固定されている。
頭にも包帯が巻かれているし、包帯の巻かれていない肌にも擦過傷や痣が出来ていて痛々しい。
でも、須藤君の言うとおり命にかかわる大怪我はないようで、ほっとした。
でも。
なんであの人が?
悠里の傍らに艶然と立っていたのは以前一度会った事のあるあの人。
久寿軒マエリ、さん。
「彼女が柏木の庇った人物だからだ。」
私の戸惑いを察したように須藤君が教えてくれる。
「そ……そう、なんだ」
勤めて冷静に納得してみせるけど
…嫌な子だな私。
危険に遭っている人がいて助けようと思うのは人間として当然だし、それに輪を掛けて悠里は優しいんだから黙って見過ごせないのも当たり前だと思うのに。
何で彼女なんか助けたの?…なんて。
醜いヤキモチで人として思っちゃいけないような事を思ってしまう。
自己嫌悪で俯く私をじっと見詰めていた悠里は徐に傍らに立つ久寿軒さんを仰いだ。
「……あの、マエリ、さん?……彼等は誰ですか?」