Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
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柔らかなオフホワイトの壁に温かな陽射しが降り注ぐ廊下。
悠里の身体を気遣う久寿軒さんによって私達はそこへ誘われた。
「単刀直入に言いますわ。お姉さま、悠里さんの幸せを思うならこれを機に普通の姉弟に戻って下さい。」
驚いて視線を上げれば、強い意志を感じる双眸とぶつかって、本能的に怯む。
「だって幾ら血の繋がりがないからと言って姉弟として出会った二人が恋愛なんて正常とは思えませんわ。」
……………私達の恋は、正常、じゃない?
「悠里さんだって義姉に恋をするなんて、とても悩んで苦しい思いをなさったんじゃないかしら。悠里さんの幸せを願うなら彼を真っ当な恋愛に戻して下さい。」
悠里は私を愛して苦しんだ…。
私達の想いは真っ当じゃない……。
須藤君が鼻白む。
「だからと言って、柏木の記憶が無いのを良い事にご自分を恋人に仕立てるのは感心できませんがね。」
あの場にいて何となく感じていた違和感を須藤君はズバリと指摘した。
そう…どことなくだけど悠里が彼女を頼りにしているような。
呼びかけも久寿軒さんからマエリさんと親密に代わっていたし。
でもそれは事故後傍にいてくれた気安さからじゃないのかなと…。
「あら、酷い言われようですわね。」と久寿軒さんはころころ笑う。
「それは誤解ですわ。身を呈して助けてくれたと言っただけで…それで彼は私を自分の特別な人と思ったみたいですわね。」
「伝え方や言葉の選び方も色々ありますからね。」
まるで久寿軒さんが悠里が誤解するように伝えたと言わんばかりに須藤君がウンザリ吐き捨てる。