Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

「ともかく…記憶を失って不安定な彼にそれ以上の不安は酷ですわ。誤解なさってるならそのままで宜しいじゃございませんか。」

「嘘の記憶を刷り込ませておいて何が酷ですか。」

「先ほども言いましたがそもそもお二人の関係がおかしいんです。悠里さんは多感な頃に出会って少しずつ構築していった信頼関係を刷り込みみたいに愛情と勘違いしているに過ぎません。もう少し分別のある時に姉弟として出会っていたら結果はまた違ったはずです。」

「俺はそうは思わないですけど。」

「俺もだ。」


果敢に援護する男性陣二人に、久寿軒さんは臆する事無く余裕の笑顔を向ける。


「でしたら尚更好都合じゃございません?今が正に“分別ある大人で姉弟として出会った状態”なんですから。悠里さんが姉と知って恋に落ちるのか、試す価値はありますわ。」

「そんなモノ試す事じゃ―――」

「あら?彼の想いを本当は信じて無いんですの?」

「………。」


畳みかけるように問い返されて憮然と口を噤む二人。

久寿軒さんが私に顔を戻す。


「幸いまだ婚姻届を提出してないですものね。」


その言葉に二人がちょっと驚いたように目を見張る。


「…柏木、それは本当なのか?」

「え…あ、はい。…ちょっと色々あって…。」

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