Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

「じゃ、支度する間先に盛り上がってて下さーい。あ!悠里はまだ怪我人なんだから、お祝いとはいえあんまり呑んじゃダメだからね?」


「じゃ、遠慮なく」と言って呑み始めたのは須藤君。

戸惑う悠里のグラスにグラスを合わせ、まごつく空気をさり気に動かしてくれた。

それにホッとしてシンクへ舞い戻ると「手伝うぞ」と木戸さんが後を追ってきた。


「何すればイイ?」

「じゃ、白滝を笊にあけて流水で軽く洗ってください。」

「了解。」


シンクで作業する木戸さんの隣で私も野菜を切っていく。

ふふ……何だか木戸さんの家でオムライスを作った日のよう。

他愛無い話しをしながら並んでご飯の支度をする穏やかでくすぐったい時間はまるで……


「…新婚みたい、だな。」


驚いて思わず木戸さんに顔を向け、少し照れたように笑う木戸さんに、コッチこそ釣られて赤くなった顔をまな板に戻す。


「も、もう~っ。そう言う冗談ヤメテくださいよ。なんか慣れなくて照れちゃいます。」

「…だな。俺も恥ずかしいからもう言えない。」


お互い気まずげな顔を合わせ、思わずぷっと吹き出した。



スキヤキパーティーは大盛況。

お肉は美味しいし、お酒が入って気分はふんわり向上気味で。

記憶の無い悠里の為にもっぱら思い出話に花が咲いた。

時々悪戯な須藤君が真面目な顔で人を担ぎ「嘘だ。」とオチを付けたり、それにコッチは一々驚いて種明かしに脱力したり……。

宴もたけなわ。

十時を回った頃相に、明日の朝が早い木戸さんが暇を告げた。



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