Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
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☩side☩悠里☩
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事故から一週間は入院し、その間体調が急変する事もなく一先ず退院する事が出来た。
依然記憶は戻らないながらも外傷は足の骨折だけなので、二週間目には仕事へ復帰。
とはいえまるで分からない事だらけで四苦八苦だけども。
いつも仏頂面でお世辞にも愛相がイイとは言い難い須藤さんだが、コレでいて中々気遣い強いらしく卒なくフォローをしてくれる。
後輩(らしい)久保塚君もとても良い人で、何も覚えていない僕に一から丁寧に仕事を教えてくれて、復帰直後には量産グループから呼んでいた応援の人も一週間もしないうちにお役御免とばかりに自分の仕事に戻っていった。
「おーう!調子はどうだ?」
元気溌剌に挨拶をかまして試作室の扉を開け放った彼は、営業の幸村さん。
プライベートでつるむ関係じゃないにしろ、営業の彼とも仕事を介して仲は良く軽口を叩くくらいには密接な間柄、……だったよう。
「流石は柏木さんってカンジですよ。日常の言動はまだちょっと固いですけど、仕事の腕は以前通りです。」
感心した風の久保塚君の返事に幸村さんは子供みたいな也をして「そうかそうか」と鷹揚に頷く。
道具とか、工程を覚えるのはちょっと大変だったけど作業自体は嫌いだとは感じなかった。
以前の自分をまるで覚えてないからなんなんだけども、覚えていないからこそ誰に対しても無意識に一線を置くように敬語になり身構えてしまうのが、周囲に言わせると『固い』らしい。