Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
☩03☩苦悩より煩悩
☩ ☩ ☩
「仕事はどうだ。」
金曜日の夜。
僕は須藤を誘って居酒屋へ来ていた。
呼び捨てにはまだ抵抗があるけれども、同期だし、同年齢だし、以前はそう呼んでいたのでそうしてくれという本人の希望もあり、そうなった。
「…はぁ…まぁ、仕事の方はボチボチですけども……。」
「ふん?じゃ、悩みは私生活か。」
口籠る僕とは正反対にズバリと核心を突いてくる彼に思わず口を噤む。
事故から既に一カ月が経過していた。
脚のギブスも取れて身体は完治した。
記憶は依然戻らないままだけど。
僕は、はぁぁぁ、と深い溜息を吐いて項垂れた。
「僕はオカシイんでしょうか。彼女はあんなにとても魅力的な女性だと言うのにまるでトキメかない……。」
これが今の僕の最大級の悩みの種だ。