Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

噛み締めるようにそう言うのを、須藤は黙って聞いていた。

そして一言。


「俺に聞くまでもなく結論は出ているじゃないか。これまで通り清く正しく姉弟として生きていけ。それがあのネーチャンとオマエの望みなんだろうが。」

「…………。」


確かにそうだ。その通りだ。

けれども。

そうし難いからこうして相談しているという事を彼は分かっているだろうか。

使えない魔法使いに内心辟易と溜息を零していると不意に聞こえた小さな笑声。


「俺の知っている柏木悠里という男は、かなりの完璧主義で―――…」


突然始まったのは僕の望む答えなどではなく、僕自身の事。

決して笑顔を崩さず傍目にはあくまでも優雅に振る舞っていたが、自分の意志を貫くためには時に苛烈に真っすぐで一途で、決して折れる性質ではなかった。と。

言葉は違えど、人伝てに聞く以前の僕は、人当たりが良く、仕事に於いても人間関係に於いても卒が無く、されど柔和なだけではなくちゃんと自分の意志も主張出来る人物だったよう……。

聞けば聞くほど、そんな完璧な人本当にいるの?と、我が事とも思えず若干のプレッシャーを感じたりもしたけれど。

須藤はお猪口から放した口を人の悪い笑みに歪め、意味深に言った。


「真っすぐとは我儘、一途とは自己中、折れない性質ってのはただひたすらにシツコイ。卒が無いとは聞こえがイイが、単に策略家なだけ。……俺から見た柏木悠里は」














――――諭しようもない暴君だった、と。


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