Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
『ヌルイ幸せなんて、本当の幸せなのか?』
かつての木戸さんの言葉が蘇る。
あれは、悠里の病院から帰る車内での話。
『平凡で穏やかな物を否定している訳じゃないが…。恋愛だけじゃなく、目標にしろ、生活にしろ、本気であればある程求めれば苦しくなるだろう。だが、それほどまでに盲目になれる物に出会える事こそ奇跡みたいなもので、俺にとっちゃ羨ましいと思うけどな。』
その話を聞いても納得は出来なくて。
正直、今でもきっぱりと頷けない。
苦しくなっちゃうような愛でも悠里が幸せだなんて、私には断言できない。
……でも少しなら分かる気がするの。
私は例え悠里の幸せと引き換えにしても、今与えられる熱が欲しい。
どんなに悠里が苦しんで苦しんで苦しんだって、悠里と一緒に居たい。
悠里に愛されたい。
「……ゆう…り…」
それが合図だったかのように、キスと愛撫が深さを増した。