Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩


―――逃げないで。


痣をなぞりながら夢うつつに聞いた言葉を思い出す。


“本当は逃げ出さないように縛っておきたい所だけど、貴女が逃げ出さないと信じています。
僕の信頼を裏切らないで。”


確かに悠里はヒモで縛り付けるような事はしなかったけれど、その赤い痕こそ私を縛り付ける鎖のよう。

信頼という見えない強固な鎖。

バカだな、悠里は。

私は自分の意志で悠里を受け入れたんだから、今更逃げる筈ないのに。

悠里はいつだって私を優先して大切にしてくれたっていうのに、
彼の幸せより自分の欲望を選ぶ私はなんて薄情で強欲なんだろうと思う。

だけどもう躊躇えない。

酷い姉だと罵られたって、私は悠里と一緒にいたい。悠里が苦しんだって、私は自分の欲に忠実になる。


「…早く悠里に会いたい。」


私の心半分置き去りに走り去ってしまったおっちょこちょいのお姫様。

ようやくアナタの元へ返ってこられたよ……。




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