Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
パイプ椅子に並んで座って書類を片手に話をしだした二人を肩越しに見ながら店頭に向かう川端君が呟く。
「ほーぅ。あの無反応…ってことは木戸蚊じゃないのか。」
「と、当然です!!カフカじゃあるまいし木戸さんは虫じゃありません!!」
だったら…、なんて川端君が思考を巡らせている事など露知らず、私はこれ以上のツッコミを恐れて逃げるように販売へ入った。
☩ ☩ ☩
さすがにセール中だけあってお客様が多く、私が休憩に入ったのは夕方。
はぁ…疲れた~。
ちょっと早いけど、後はラストまでだからここで夕食を取っとかなきゃ。
今日はどこも混んでるだろうし、休憩もゆっくり取れないだろうしと思って、バックヤードで食べるつもりでお弁当持参なの。
パイプ椅子を引いて来てお弁当を広げてイッタダキマース。
「お。柏木、休憩か?」
んぐっ。
突然聞こえた木戸さんの声に危うく口に入れた卵焼きを丸のみしそうになっちゃった。
「ふはっ、い。木戸さんも休憩ですか?」
「ああ。茶飲み休憩。でもその間に販売報告書と、販促レポート纏めなきゃ、だけどな。」
そう言って木戸さんは私の横に腰を下ろした。
ち、近いっ。
狭いバックヤードだから並んで座れば肩がほんの少し触れ合う。
木戸さんは至ってフツーにペットボトルのお茶を煽りながら書類に目を通していたりするけど。
き、緊張するっ。
それに耐えられず、思い切って口を開いた。