Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
ふわふわしているがかなり常識人な姉の物分かりの良い返事に須藤がホッとするのも束の間、後ろで王子が喚く。
「二泊三日も姉さんと離れていられる訳がないでしょう!?絶対着いて行きます。」
「ふざけるな。明後日に結構重要な社内打ち合わせがあるだろう。オマエ出席メンバーだろうが。」
「じゃ、打ち合わせに間に合うように戻ってきます。」
「適当な嘘を吐くな!!」
電話口の激しい応酬に美久がはは…と空笑いする。
結局『イイ歳の大人が弟付きで出張するのもね…』と美久が悠里を諌めて丸く収まった。
……丸く収まった?
「………どうして僕はここにいなきゃいけないんでしょうか。」
仕事が終わって悠里が現在いるのは須藤のマンション。
忙しい須藤も今日はやむを得ず定時で帰宅した。
「何故って、目を放した隙にオマエが逃走するからだ。安心しろネーチャンにはちゃんと許可は取ってある。」
「そんな横暴なっ。だって姉さんが家を出るのは明日の始発に間に合うようにですよ?せめてそれまで姉さんを堪能しなきゃ僕死んでしまいます!!」
「ダメだ。」
着いて行かないと約束はしたものの美久至上主義の悠里であればあっさりそんな約束は破りそうだ。
逃げ出されでもしたら連れ戻すのは至難の業だ。
うかうか目を離せない。
そして、悠里が出張について行けないとなると美久を出張に行けなくさせる線が濃厚で。
『出張に行けない事態になったら困るなぁ~』とぼやいていた美久にとってもコレが最善の策。
例え綺麗な目にウルウルと涙を湛えて懇願されたとて折れる訳にはいかない。
「ホラ、ネーチャンに幻滅されたくなきゃちゃんと大人らしく待ってるんだな。」
そう言い放たれて悠里は渋々と須藤に従った。