Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
01☩失恋は何度でもイタイ☩
カチッ☆
狭いマンションなので玄関が解錠される音は否でも耳に届く。
私はカタツムリにでもなったつもりで、ベッドの上で被った毛布をぎゅーっと握りながら更に身を縮めた。
「美久…」
甘やかな声が私の所在を確かめながら迷いなく寝室に入ってくる。
私は頑なに毛布にくるまり口を引き結んだ。
パッチンと暗かった部屋に明かりが灯る。
柔らかくベッドのスプリングが撓んで、毛布の上から頭を撫でる感触がした。
その感触があまりにも大きくて優しくて―――もう限界。
「ぅわぁーん!!悠里―っ。」
自ら毛布を投げ飛ばして悠里に抱きつく。
悠里はえぐえぐ泣きじゃくる私を優しく抱きとめながらもちょっとダケ呆れたように笑った。
「“また”振られちゃったんだ?」
「ま、またじゃないもっ!またって言わないでー。」
「うんうん。付き合う前に振られちゃったヤツは、確かにカウントすべきじゃないからね。」
「ぅぅ…悠里がイジワル言う~。」
ほら、と悠里の差し出すティッシュで鼻をかむ。
目じりに残っていた涙は悠里が優しく親指で拭ってくれた。
すんっと鼻を啜ると、はーっと大きな溜息が出た。
「そんなに好きだったの?」
「…分かんない。」
まだ分からないよ、そんなの。
分かる前に断ち消えちゃったんだから。
だけど好きになる予感があったの。
世界一好きになる予感があったの。
結婚するならこの人かもしれないなんて思ったんだもん。