Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩



「美久……。」


頬に添えられた手に従って顔を上げれば唇が塞がれた。

重なっただけの口付けがゆっくり溶かすようにして口内を侵食していく。


「ゆぅ…りっ、口紅……取れちゃうよ。」

「いっそ今すぐ美久の全てを食べちゃいたい……」

「それはダメ。」


きっぱり拒否れば悠里はがっかりしながらのろのろと身体を戻した。

全くもう。油断も隙もないんだから。

うっかり流されてしまわないように気を引き締めなくっちゃ。

人前式と言っても流れは神前式と同じ。

ただし場所は教会ではなく芝生が隣接するガゼボみたいな場所。

先にバージンロードで待機する悠里とパパと腕を組んで会場入りする私は、そこで別れた。

私はパパの待つ控室へ。

悠里は介添え人さんと一足先に会場へ。

だから、その後、悠里に起こった事を私が知る由もない訳で――――






「永久(とわ)………っ」


廊下を歩いていた悠里は呪詛のように呟かれた声に、怪訝に顔を向けた。

黒いタキシードでめかしこんだ男が悠里を見詰めながらワナワナと身体を震わせている。

どちら様でしょ。


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