Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

☩side悠里☩





伸ばした手は紙一重で届かなかった。


「美久…っ!!!」


勿論すぐさま追おうとしたけれど、捕獲に協力しようと飛び出してきた参列者によって行く手が阻まれた。

花嫁が掻っ攫われるという未曽有の事態に会場も大混乱。

その中を須藤が顰めた顔で寄ってくる。


「オマエ、あの男の事を思い出せよ。何したかは知らんがちゃちゃっと謝ってさっさと返してもらって来い。」

「それが出来たら苦労はしてませんよ。」

「ともかく柏木を探そう。みんなで手分けして探すぞ。」


木戸さんの仕切りでみんな一斉に散らばった。

僕も先頭切って走り出した。

あの男……っ。

どんな逆恨みか知らないけど、式をぶち壊すまではともかく、美久に触れるとか

――――アリエナイからね。

静かに、だけど確実に身体の奥から湧きあがる黒い感情が凝固して濃度をましていく。

男に対する苛立ち。

だけどそれ以上に苦しいんだよ、美久。

傍に居てくれなきゃ鼓動の打ち方すら忘れてしまいそう。

引き離されたら僕はこんなにも脆くなる。

だから早く美久を探し出さなくちゃ……!!

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