Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
中々返事をしない私に木戸さんがふっと表情を崩す。
「…返事は今じゃなくてイイから考えてくれ。」
ぽんっと頭に手を乗せて、木戸さんは先に店頭に戻っていった。
木戸さん、大好き。
優しくて頼れる大人の男の人。
そのくせ意外なところで可愛かったりして、きゅんとさせるんだから。
私の王子様はやっぱり木戸さんしかいない!!
……そう思うのに、私は何で返事を躊躇ったりしたんだろう。
ただ一瞬、とても悲しそうな悠里の顔が頭に浮かんだの。
悠里は私に彼氏が出来たら寂しいんじゃないかって…。
私は赤い跡を覆う胸元をそっと握りしめた。
そんなカンジで私がボーとしていたバックヤードの外では…
「予想外…このままフェードアウトするかと思ってたのにやるときゃやるんっすね~。」
「というか意外とチャレンジャー…というか自虐?」
「ったく、このまたとないチャンスに何をやってるのかしらあの小娘っ。これだから告白し慣れてナイ女って…あ゛~もどかしい!!」
「へぇ。益々オモシロイ事になってきたわね。」
従業員一同が騒いでいて
「……聞こえてますよ。てか、皆さん仕事して下さい。」
威圧感たっぷりの木戸さんに睨まれ、蜘蛛の子を散らすように持ち場に飛んで行ったなんて知る由もなく―――。
それを忌々しげに見送った木戸さんがほんの少しバックヤードを振りかえり溜息を吐いた事も知らなかった。