Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
花井さんに向けた笑顔は相変わらず見惚れてしまう程素敵だったけど。
特別な物じゃなかったもの。
悠里には特別な笑顔があって、その笑顔がいつも誰に向けられているか、私はちゃんと知ってるの。
だから悠里がモテているのを見ても、あ~またか、とちょっと面白くない気はするけれど、心配になんてならないんだ。
私の言葉に悠里はちょっと目を見開き、不意にくたりと表情を緩ませた。
あ、ほら、こんな表情。
全開の笑顔なのに、少し切なくて狂おしい。
「美久には全部お見通しなんだから……」
ふふっと笑ってどさくさまぎれに唇を奪っていく。
もー、みんないるのにっ。
うっかりするともっと深いキスを強請ってきそうな悠里をあたふたと引き剥がしながら「それに」と言葉を続ける。
「だって、あの新婦さんは―――」
「犬も食わない何とやら……ってね。」
悠里には私の言いたかった事が伝わったらしく、茶目っ気にウィンクをして見せ、徐に二人に顔を向けた。
「はいはい。ストップ。二階堂君、花井さんの言い方は何だけども、花井さんは何も僕の事が好きで君に僕みたいになれって言ってるわけじゃないんだよ。君分かってる?」
「はぁ!?オマエに何が分かるというのだ。というか今のを聞いていれば分かるだろう。コイツは昔っから貴様に惚れているからな。」
「あのね。その彼女は一体誰と結婚するの。それが全ての答えじゃないのかな。」
呆れたように笑う悠里に、二階堂さんが少しびっくりしたみたいに押し黙った。