Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

そうなの。

花井さんは悠里に再会してハシャイだけど、その姿は大好きなアイドルに遭遇したファンの態度そのもので。

多分、好きは好きなんだろうけど、それは恋や愛とはちょっと違うんじゃないかな。

彼女が愛や恋の“好き”を真っすぐに向けたのは、彼女が真っ先に駆け寄った相手だと思うのよね。うん。


「人気者から笑い者へと転落したしょーもない男に、アホだグズだと罵りながらそれでも見限らずに傍に居てくれたは誰なの。」

「…転落…しょーもない、男……」

「……アホとかグズとか、私も流石にそこまでは言ってナイですけど……」


王子様スマイルで致死量の猛毒をさらっと吐いた悠里に二人は顔を引くつかせる。

徐に花井さんが深く溜息を吐いた。


「私が永久君を引き合いに出したのは、アンタが負けず嫌いで永久君の名前を出せば俄然張り切るからよ。さしずめ馬の鼻先に釣るしたニンジンよね。」

「ナンナンデスカ、ソレハ」


二階堂さんは項垂れた。


「俺はずっと、君は永久が好きなのだと思っていた。俺との結婚を承諾してくれたのは俺がしつこかったから仕方なく?もしくは同情とか、かと……。」

「はぁ!?私は同情で結婚するほどアホでもお人よしでもないわよ!」

「デスヨネ。スミマセン。」


牙を剥いて吠える花井さんに縮こまる二階堂さん。

花井さんは胸を反らせて尊大に言い放った。


「確かにアンタには永久君の爪の垢でも煎じて飲んでもらいたいトコロではあるけど、そんなのあくまでも理想だし、目標でしょっ。あたしが好きなのは、どんなに頑張ったって辿りつけそうもない理想に、それでもへこたれずに足掻いて努力しようとする愛すべきバカなの。」


花井さん…ちょいちょい毒舌です。


< 327 / 333 >

この作品をシェア

pagetop