Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
そんな悠里を無言でじっと見詰めていた須藤君は、何もその笑みに見惚れていた訳じゃなかったみたい。
徐に真面目な顔で言った。
「じゃあ……“どうして忘れたんだ?”」
須藤君ったら、アレは事故で悠里の意志じゃないのに……
ピクリと眉を動かした悠里はそんな突拍子もない事を言いだした須藤君の真意を探るように暫く見詰めて、やがて苦笑気味に肩を竦めた。
「僕の意志じゃない事だけは確かだけど…。強いて言うなら『絶対に恋に落ちる』自信があったから、かな。」
それは…どういう、事?
不思議に思って悠里を伺えば、悠里はグラスの中の淡いゴールドの液体を揺らして微笑んだ。
「あの時、姉弟の絆を恋愛と勘違いしてるだけ、だなんて言われて、そんな事ないって証明したかったのかも。…というか、姉弟であろうとなかろうと、美久に会えば必ず恋に落ちるって絶対の自信があったから記憶に固執はなかった、と言った方が正しいかな。」
現に恋に落ちたでしょう?と笑う悠里に、須藤君は若干呆れた顔をした。
確かに記憶があろうとなかろうと悠里は悠里で、実際に恋人と言う関係でさえ再構築した。
全ては悠里の掌の上での出来事だったのか、と思わざるを得ない。
悠里の記憶が失われて、私は姉弟に戻ろうと葛藤して、とても悲しくて辛かったの少しは分かってるの?なんてちょっと腹立たしい気もするけど。
でも……終わりよければ全て良し!だもんね。
いーよ。
悠里とは元の関係に戻れたんだし、その上記憶も戻ったんだから言う事ナシだよ。
そんな他愛無いやり取りの後、友達に呼ばれてその場を離れた私は、その後のやり取りを知らないワケで―――