Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
「嘘吐いちゃった。」
隣から洩れ聞いたふふ…と言う笑声に須藤は怪訝な顔を向けた。
「何が“嘘”なんだ?」
グラスの中の液体を眺める悠里の口元が小さく持ち上がった。
「美久の為なら何でもデキルなんて、大嘘だよね。この先、美久が僕から逃げたいと懇願しても僕は絶対離してなんてあげられないもの。」
記憶を失ったのは僕の意志じゃないけど、と言うのを前置きに、記憶を失うに至って少なからず僕の意志が汲まれているのなら――――と続ける。
「多分ね、アレが美久を解放出来る最後のチャンスだったと思うんだ。」
手中に入れてみてももどかしい程の愛。
きっとこの先、その愛で美久を雁字搦めにして、ひょっとしたらその先で壊してしまうかもしれない。
愛おしくて愛おしくて堪らない人。
大切にしたいと思ってみても、その愛はもはや自分の意志では制御不能。
彼女の為に、彼女の幸せの為にと思ってみても、その愛情をコントロールする手立てもなければ、手放す理性も働かない。
記憶を失ったのはきっと、本当に最後のなけなしの誠意。
美久を重すぎる愛の犠牲にする前に。
大切な美久に幸せになってもらうために――――