Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
悠里には麗那さんがいるからもう私はイラナイの?
それとも、もう本当に私にお守なんてこりごりだと思ってた?
俯く私の頭にぽんと大きな掌が乗って、甘い声が落ちてくる。
「彼氏が出来たなら尚更ここにいるベキじゃないと思うよ。気心知れた職場の仲間とはいえ男性ばかりで、彼氏が知ったらあまりいい気はしないでしょ?」
子供に言い聞かせるように優しく諭されて、もはや反論も出来ずこくっと頷き荷物を持ってくる。
靴を履き終えると目の前に手が差し出されて、私は当然のようにその手を握った。
玄関先に二人で並び、悠里が柔らかな髪を揺らして三人に向けて丁寧におじきする。
「では夜分遅くまで姉がお邪魔致しました。今夜はこれで失礼させていただきます。」
「おじゃましました…」
悠里に倣って私もペコっと頭を下げてご挨拶して、店長宅を後にした。
パタンと閉まった扉の向こう―――
「「「怖…っ」」」
異口同音洩れた言葉を知る由もない。
「なんなんですか。あの人のポーカーフェイス…というか、自信。仮にも恋敵の存在に微塵も笑顔が崩れないとか…」
「はぁ~、彼にとっちゃライバルにもなっちゃいないってことじゃねぇの?まぁ、ミクミクがあの調子じゃあね。」
「なぁにをぐちゃぐちゃ考えてんのか知らないけど小娘もバカよねぇ。“アレ”から逃げられると思ってんのかしら。」
そんな言葉を口口に、さぁ呑み直すぞ~とリビングに戻って行った事など知る由もない。