Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

幸せにトリップしていると目の前に手が差し出された。

……ん?

ワケが分からずマジマジ見ていると、木戸さんは痺れを切らしたように私の手を掴んだ。


「や。だから手を繋いで帰ろうって意味で……凝視されると間抜けな上に恥ずかしいだろう。」

「へ?あっ!ごごごゴメンナサイっ!!」


繋がれた手から伝わる体温に心臓が爆発的に早くなる。

それに輪を掛けて、スマートに“彼女”になりきれない自分に甚だヘコム。


「えと…ゴメンナサイ。私こんな風に男の人とお付き合いするの慣れてなくて…。手を繋いで帰るとか思いつかなくて……。」


情けないながらも本心を吐露すれば、一拍置いて木戸さんから返された言葉は意外なモノ。


「でも“アイツ”とは手を繋いで帰ったりするのもフツーなんだろ。」


不思議に思って木戸さんを見上げれば、木戸さんはいつになく苦い顔をしていて、益々疑問になる。


「アイツって誰ですか?」

「…………………まぁ、君の弟クンだよな。」


ぱちぱちと瞬きを繰り返す。


「そりゃ悠里とは手を繋ぐけど…だって弟ですよ?」


悠里と出会ったのはまだ悠里が小学生の時で、手を繋いでも全然不思議じゃなくて。

確かに改めると手を繋いで歩く歳でもないかもしれないけど、ずっとそうだったから違和感なんてなかったんだけど………

でもこの木戸さんの反応を見るにこれって変なことなのか。

こ、これから気を付けなきゃ。

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