Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
02☩王子と仕事と姫と☩
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繁華街にある大手百貨店のテナントの一つ『NANATORI』
七羽の鳥が7の字を描いたロゴがお馴染みの靴のブランド店。
私の仕事はその販売員。
その日は普通のサラリーマンなんかよりはずっと遅い十時出社。
…はぁ、行きたくないなぁ。
「おはよう、ございます。」
足取りも重く店に辿り着き、恐る恐るそう挨拶すると、同じく販売店員のリノちゃんが掃除の手を止めて「おはようございまーす」と可愛らしい笑顔を返してくる。
一番気掛かりな人の声は無くて、ホッとしたはずなのにガッカリしてバックヤードに向かう。
「あ。おはよう。」
…不意打ちっ。
長い脚を持て余すみたいに組んでパイプ椅子に座って書類を見ていた木戸さんが私に気付いてパッと顔を上げた。
「おはおは…おは、よ、ございま、す!!」
心の準備をしていなかったからとはいえうろたえ過ぎたぁ~。
木戸さんはその力みまくった挨拶にちょっと驚いたように目を見張り、続いて心配そうに私を覗きこんだ。
「体調は、もういいのか?」
ぅ、挨拶の所為だろうか。
でも心配されている事は確かで、仮病の私は罪悪感で視線を俯ける。
「は、はい…あの、忙しいのに休んでしまってスミマセンデシタ。」
「ん。でも健康第一だからな。あんまり無理はするな。」
くしゃっと頭を撫でる。
その大きくて優しい掌の感触に、ドキンと胸が鳴る。
木戸さんの…バカ。
私を病気にしたのは木戸さんなのに、そんな甘い顔で気安く頭なんか撫でないで欲しい。