Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
試作段階なので粘土細工の時もあれば、プラ板の切った貼ったの時もあるし、場合によっては製図も引く、という……種類は勿論、作業も無節操。
だが、あくまでデザイン課。
今回飲料ペットボトルに付ける食玩の企画で、注型式の単一パーツではクオリティーが低いので、複数パーツにして組み立て式にしたらどうか、という提案をしてみた。
幸村さんが精力的に掛け合ったものの、取引先の腰の重いオジサン方を納得させるには至らなかった。
曰く「所詮、オマケなんだし…」どーでもいいでしょ、というコトらしい。
確かに食玩など価格としたら安物で、その気安さから消費者の扱いもぞんざいな物ではあると思う。
けれど作る側としては、同じ事を口にして適当にする訳にはいかない。
それがいつか巡り巡って自分達の評価になるのだから。
それで今回、幸村さんと共に組み立て式の試作を手に僕が直々に取引先の企画会議に出向いたワケなのだが……
ソコはやっぱり営業の仕事だと思うんデスケドね?
「そりゃーそーだけどよー。」と幸村さんは腕組して子供みたいに口を尖らせた。
「オマエ連れてくと通りがイイんだもんよー。今回だって俺が何言っても聞く耳持たずのあのトウヘンボクのオッサン共が一発KOじゃねーか。さすがキラースマイル。」
「ぅわ~。柏木さんのそのスマイル、女性のみならずオジサマ達にも効くんですかぁ。もはやリーサルウエポン(最終兵器)ですね。」
人の笑顔を兵器呼ばわりして驚くのは、久保塚君。
去年入ったばかりの新人君で、この課で唯一の後輩だ。
久保塚君の言葉に幸村さんがきらっきらした目で身を乗り出す。
「おぅっ。今度、メッチャクチャな企画書出して、コイツの笑顔でどこまで落とせるか試してみたいと思わんか?」
…この人は。
「そんな事したら二度と助けてあげませんからね?」
「冗談だよ。怒るなよ。笑顔が怖ぇーよ。」