Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
そんなやり取りにまたも須藤が唐突に口を開いた。
「ああ。どこに寄り道したかと思えば“彼女”の所か。」
女子社員の前で“彼女”と言ってくれる辺りは流石悪友。気が効く。
えっ?と固まる女子社員をあえて気に留めず、僕は隠しきれない笑みで相好を崩した。
そりゃもうデレデレと。
初めて仕事をしている姿を見たけど、また一段と可愛いかったよね。
ちっちゃい体でクルクル、パタパタ動き回ってるのが健気で愛らしい。
ま、いついかなる時も可愛いケド。
「か、柏木さんて、か、彼女いらしたんですか?」
「彼女ってか。……ま、同じ名字だよな。」
「え゛っ!?」
意味深な須藤の答えに、素っ頓狂な声を上げて固まる女子社員。
僕は唇に人差し指を押しあてて、茶目っ気に笑って見せた。
「あんまり騒がれるの好きじゃないので、内緒にしておいて下さいネ?」
生気のナイ足取りで部屋を出て行く女子社員を見送って、久保塚君が振り返る。
「可愛そうに。今の人ガチで誤解しましたよ。同じ名字って言ったって本当は『お姉さん』なんでしょ。」
「いいんだよ久保塚。コイツの場合、女避けの嘘だからな。」
「半分は」と須藤が小さく付け加えた言葉は、久保塚君が「モテル男えげつなっ」と叫んだ声に掻き消された。
そんなやり取りを渋い顔で腕組をして聞いていた幸村さんが徐にびしっと人差し指を突き出した。