Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

偶然同じ百貨店に須藤の“女友達”がいたので、『木戸さん』を誘惑させた。

そのオプションに『彼に片思い中の柏木美久に取られないように』というミッションも付け加えて。

女としてのプライドが高いその娘は意気揚々と直ぐに行動に移してくれたよう。

結果、美久は二人の仲を誤解し片思いにピリオドを打つ決心に至った。

まずまずの結果だけど、まるで喉に引っかかる小骨のように残ったしこり―――疑念。

だって“『木戸さん』は落とせなかった”んだから。

美久は素直で純真で…

本人がそうだからか、人の悪い所より良い所を見付けだす能力に長けている。

常に惚れる男は誠実だったり、優しかったり、男気があったり、と一般的にかなりイイ男だった。

―――そして今回も。

美久の恋愛相談に乗ってる間に僕が連想した人物像は頼りがいがあり分別のある大人で、仕事では中々のやり手で、時々母性本能を擽るような不器用さがある男。

自ら出向いて木戸さんに会って、再確認した。

ああ……やっぱり大っ嫌いなタイプだな。と。


「大まかに言えば幸村さんタイプかなぁ。」

「成程。オマエが最も苦手とする種類だな。」


決して人として嫌いな訳じゃないし、見方に付けてこれほど戦力になる手合もない。

真っすぐにして豪胆。

損得勘定も勝算も度外視されて、周囲が何を言おうが、最終的には自分の直感なのか意志に従うタイプ。

だからこそ敵対すると些か厄介な相手。

カワイ子ちゃんの誘惑にもよろめかず、あまつさえ普段美久が無邪気に披露しているだろう“ドン引きレベルのシスコンな弟”が目の前に現れて話以上のイチャイチャっぷりを見せつけてみても『諦めないぞ』という目で見返すようなヤツなんだから。

本当に目触りな人だ。

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