Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
総務に書類を提出して、須藤も無事名刺を受取る。
管理部のルーキーと僕の出現に色めき立つ女子社員を当たり障りなくやり過ごすミッションも恙無くクリアし、廊下を戻り始めた。
「か、柏木さんっ……」
後ろから追っかけてきた声に振り返ると、総務課の女子社員だった。
ショートボブの黒髪に眼鏡。
髪を綺麗に巻き、爪をピカピカと光らせている女子社員が多い中、悪目立ちに地味で内気な方だ。
「あの…こ、これ、営業の課長から預かった書類ですが。柏木さん宛てに。」
ありがとう、と受け取る前に、彼女の腕から抱えていた封書が数点床に落ちた。
拾った手紙の送り先はデザイン課課長の西沢さん。
どうやら彼女は現在、会社に届いた手紙の類をそれぞれの課へ配達している途中らしい。
「他にデザイン課宛の物があるなら貰っていきますよ。」
「えっ、でも…」
「あ。何か言付けとかあったりします?それとも白井さんが直接相手に手渡さなくちゃいけない重要書類の類だとか。」
「っ…ぃいえ、そんな。ぁりません、けど。」
じゃ、下さい。と彼女の腕の中からデザイン課方面の物を取り出す。
ついでに営業課と管理部の物も。
須藤が不満げに眉を顰めるのを無視して押しつける。
「す、スミマセン…私の仕事なのに…」
「ついでですから。」
蚊の鳴くような声で謝辞を述べる白井さんとそこで別れて再び歩き出す。