Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
02☩夢で逢いましょう☩
☩ ☩ ☩
その週の金曜日のコト。
「おい。そう溜息ばっかり吐くな。酒が不味くなる。」
並んで座る須藤が嫌そうに眉間に皺を寄せる。
就業後、
『呑みに行くぞ。』
須藤の唐突な提案により現在に至る。
男二人で洒落たダイニングキッチンもないだろうと場所は気兼ねない居酒屋に決定。
僕達がいるカウンターに至っては、焼き鳥の香ばしい煙とそれを焼く大将の熟練の技が眼前に臨める。
焼き鳥は本格的だし、料理も美味しいし、鬱陶しい視線を投げかけてくる女性もいないし、文句ナシの良い店だ。
しかし、赤ら顔で呵々大笑するサラリーマンが大半を占める居酒屋で、スーツ姿のクールガイは甚だ浮いていると思う。
そう言ったらば、口の減らない親友からは『リアル王子も浮きまくってるぞ』と鼻で一蹴された。
この間須藤には“駒”を斡旋してもらって無碍に出来ないのは承知しているけども…
「…早く帰りたかったんだよ、僕は。」
ウンザリと溜息をつけば、未だ手つかずの僕のお猪口の上で徳利が揺れた。
「普段付き合い悪いんだからたまには付き合え。それにどうせ“ネーチャン”も今日は『遅番』なんだろ。」
早々とビールから熱燗に切り替えていた須藤が、呑めと目で促す。
仕方なくお猪口を空ける。