Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
須藤は僕の威嚇に動じる事無く、空になった徳利をカウンターに上げ大将に「おかわり」と声を掛ける。
「友人としての忠告だ。俺的には見ていて飽きないからどうでもイイ事だが。」
何が須藤の触手に触れるものか、こんな言い分で須藤は僕の悪巧みにも手を貸してくれるわけだけど。
「好きな女を傍に置いといて告白一つ出来ないとはとんだ臆病者だ。」
「まともな恋愛一つ出来ない君に言われたくない事だね。」
須藤はお固い見た目に反して中身はイイ意味でも悪い意味でも柔軟だ。
容姿、家柄、話術…それらすべてを揃えている須藤がモテナイはずもなく“女友達”もかなりいる。
しかし、その誰かに心を留めた事は未だかつてない。
僕の挑発にも須藤は「俺はまだ運命の相手に出会ってナイだけだから良いんだよ。」と嘯いて取り合わず。
「ともかくオマエが弟である以上先はないぞ。手放すつもりがないなら、いつも他でするみたいに我儘を炸裂させてみたらどうだ。」
「僕がいつ駄々を捏ねたの。僕は常に冷静沈着な紳士でしょうが。」
「そうか。常に悪逆非道な暴君だと思ってた。なんだかんだと結果的には自分の意見ごり押しするだろ。その笑顔で。」
ふふんと笑う須藤にコッチはうんざりと溜息を吐きたい気分。
知りつくした仲も良し悪しだ。
その後も須藤はいつになく辛辣なクダを巻き続け、僕はその分酒を煽った。