Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
母親が再婚する事になって、新しく出来た父親に対しても僕はイイ子ちゃんで振る舞った。
片親で苦労した母親に迷惑をかけないように振る舞う出来た息子
……なんて盾前で、もはやその頃には優等生である事が僕のステータスだったんだから。
そして僕が最も気を張っていた相手が新しく出来た“お姉ちゃん”
この人がまたとてもトロ…不器用な人で。
不器用なくせに一生験命な人で。
ふにゃっと笑う人。
特別敵対視する程の相手でもないはずなのに、何故か彼女には一層気を使ってしまう。
自分でもよく分からない気持ちを僕は、年上といえどもこんな人に何一つ負けたくないから(仮)と結論付けておいた。
―――そんなある日。
学校の帰り道に犬に追いかけられた。
犬に限らず昔っから僕は動物に嫌われる性質なのだ。
それは絶対咬まないから、と言われたハムスターにまで咬まれる程の徹底ぶりで。
後に友人になった男には
『動物だからその秀麗な面には騙されずオマエの性悪な本質を見抜くんだろ。』
と、しれっと言われたけども。
屈辱以外の何ものでもないけれど、牙を剥き出しに追いかけてくる犬に虚勢を張る勇気もなく逃げた。
靴が脱げたのもそっちのけに公園に飛び込んで目についたジャングルジムに飛び乗った。
しかしこれからどうしよう……。
犬の姿がないのを確認してそっと降りてみても、どこからともなく犬が現れる為うかうか降りられない。
徐々に赤味を増す空を眺めながら溜息が落ちた。