【短編】友達彼氏





なんだ。
気付いてたんだ。
なんて、冷静にぽつりと思った。

そんなことより今は、一向に振り向く気配がない牧瀬が一体どんな顔をしているのかということの方が、私は気になる。
彼は何故そんなことを考え、今それを私に確認したのだろう。



「牧瀬はなんでそう思うの?」


「なんとなく・・・加藤だったら、嫌だなあと思って」


「・・・・・・・」


「・・・なんか言ってよ、はずいじゃん」


「・・・・・・・」


「・・・・やっぱ、オレには無理だったな」


「・・・え」


「オレ、成美ちゃんのこと振り向かせられるって、わりと本気で思ってたからさ、馬鹿だよね」



なんの話。



「笑っていいよ、」



そんな泣きそうな声で言われて、笑えるわけがない。
それに、私が絶対笑わないのだって、知ってるくせに。





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