【短編】友達彼氏
別れる、っていうのは、好きじゃなくなった相手に言う台詞だと、私はずっと思っていた。
でも、牧瀬は私と目が合って赤面するくらいだ。
「よく、わからないんだけど」
今の気持ちは、それに尽きた。
好きじゃなくなったと、はっきり言われたなら理解はできる。
でも、今の牧瀬はきっと、違うから。
別れるってなに?
ていうかそれ以前に、私には付き合うということが何なのか、理解できていないのかもしれない。
「成美ちゃんはさ、加藤とのほうが、お似合いなんじゃないかな」
いや。
そんなことが聞きたいんじゃないんだけど。
「だからさ、手、離して」
今、目の前にいるのは、誰。
こんなふうに喋る牧瀬を、私は知らない。