もう、明日がないなら…
「誰だ?」

 雄哉は後ろに向かって叫びだす。その声に反応するように彼らの前に立ちはだかったのは、顔を傷だらけにした雅臣だった。

「随分と早いお着きだ。外に、見張り番を置いておいたのに。結局は役立たずだったみたいだな」

 雄哉は鼻で笑い、小さくため息をついた。

「いや、毒された体には大層な敵だったよ。…彼女に罪はないだろう?」

「死に損ないの兄さんの大事なモノを奪う絶好のチャンスだからな。…あの時
の続きだよ」

 雄哉はそう口にすると、腕を伸ばし美妃の手首を掴んで引き寄せた。そして彼女の首に左腕をまわし締め上げると、右手に握られた銃口を彼女の頭に付けた。

「雄哉。今までにお前が俺に何かに勝ったことはあったか?」

 いつもは冷静な雅臣しか見たことがなかった美妃だったが、目の前の彼の挑戦的な目を見た時、体の震えが止まらなかった。

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