もう、明日がないなら…
「ねぇ、雅臣さん」

 ベンチに腰掛け、美妃が不意に口を開く。

「なんだい?」

「退院したら、一緒に行きたいところがあるの」

 彼女のその言葉は、高い棟と棟の間をすり抜けて行った。決心が固く、必ず遂行しなければならないこと。雅臣には、ちゃんと解っていた。

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