もう、明日がないなら…
「お前の可愛い彼女が、ギャップを感じて引いてるぞ」

 大きく笑ながら雅臣にそう言われ、雄哉はハッと美妃の顔を見る。

「…雄哉さん、たった一人の家族なんだから、そんなこと言わないで」

 美妃は俯きながら、彼の襟元を掴む手に力を込めていた。きっと事情があるに違いない。しかし、美妃にはどう言うわけか、彼のその対応に耐えられなかったのだ。すると、彼は深いため息をひとつ吐くと、目を伏せた。

「長い間、居座られては困りますよ」

 それだけ言うと、雄哉は美妃から離れ、スタスタと一階の書斎に向かい、足早にこの場を離れていった。雅臣は、そんな雄哉に構うことなく、美妃に頭を下げた。

「どうもありがとう」

 ニコッと笑う雅臣に、美妃は身体の中に電流がピリっと走ったような感覚を覚えた。さっき、スーパーで会った時とはまるで印象が違う。急に恥ずかしさに襲われた彼女は、視線を逸らしていた。

「雅臣さん、お食事は…?」

「済ませて来ましたから。今日はもうお休みなさい」

 雅臣はそう告げると、くるりと向き直り歩き出す。玄関ホールに美妃を残したまま、二階の自室に向かうために階段を登っていったのだった。

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