もう、明日がないなら…
 “お嫁さん”と言われ、美妃の頬が赤く染まっていった。恥ずかしく、照れ
笑いを浮かべながら視線を逸らした。

 さっきまで着ていたスーツを脱ぎ、ラフなTシャツに、アイスブルーのデニムパンツを履いた雅臣は、キッチンから離れようと歩き出そうとした。相変わらず、細くて長い足だ、と美妃は思った。

「あ、でもついでですから」

 美妃が踵を返し、シンクの隣にある食品庫の引き出しを開けると、自分が飲むための紅茶の缶を取り出した。

「では、お言葉に甘えて、ついでにお願いします」

 頭を軽く下げる彼を見ると、頷きながら美妃は紅茶をいれる準備を始めた。

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