もう、明日がないなら…
「雄哉は会社ですか」
レモンティーの入ったカップを手にしたまま、リビングに入って来た美妃に彼は言った。さっき見せたあの寂しそうな笑顔ではなく、無表情に近い彼は、視線を落とし彼女と目を合わせようとはしなかった。
「え、えぇ。今日からフランスですって。私も夕方の便で成田を発ちます」
「新婚旅行、ですか」
「あの、雅臣さん」
彼の話を遮り、美妃は彼の前に立った。彼は持て余すように揺すっているカップから、目線を上げようとしない。それでも、美妃は構わず話をしようとした。
ちょうどその時だ。訪問客を知らせるベルが鳴ったのだ。家政婦が受話器をとって、対応する。
「雅臣様。小栗様とおっしゃる方がお見えです」
「通してください」
美妃を通り越してそんなやり取りをすると、雅臣はカップを置いて席を立った。
「雅臣さん…!」
「美妃さん、すいません。また今度、ゆっくり」
彼は申し訳なさそうに頭を下げ、美妃を残して、リビングを後にしたのだった。
レモンティーの入ったカップを手にしたまま、リビングに入って来た美妃に彼は言った。さっき見せたあの寂しそうな笑顔ではなく、無表情に近い彼は、視線を落とし彼女と目を合わせようとはしなかった。
「え、えぇ。今日からフランスですって。私も夕方の便で成田を発ちます」
「新婚旅行、ですか」
「あの、雅臣さん」
彼の話を遮り、美妃は彼の前に立った。彼は持て余すように揺すっているカップから、目線を上げようとしない。それでも、美妃は構わず話をしようとした。
ちょうどその時だ。訪問客を知らせるベルが鳴ったのだ。家政婦が受話器をとって、対応する。
「雅臣様。小栗様とおっしゃる方がお見えです」
「通してください」
美妃を通り越してそんなやり取りをすると、雅臣はカップを置いて席を立った。
「雅臣さん…!」
「美妃さん、すいません。また今度、ゆっくり」
彼は申し訳なさそうに頭を下げ、美妃を残して、リビングを後にしたのだった。