もう、明日がないなら…
　銃撃されたショックで、美妃の身体は思うように動けなかった。佳美と雅臣に支えてもらいながら、彼らは表に停めてあった佳美の車に乗り込んだ。ハンドルは雅臣が握り、助手席に座った佳美は神経を研ぎ澄ましながら周囲を警戒している。ビクビクしながら後部座席に美妃が座ると、車はすぐに発車した。

「誰を狙ったと思う？」

　さっきまで神経を集中させていた佳美が顔を少し後ろに傾かせ、不適な笑みを浮かべて美妃に言った。

「誰って…」

　美妃は困惑しながらついそう聞き返していた。彼女には当然、見当もつかなかったのだ。自分が一人で屋敷にいた時も何度もあった。その時、こんな風に狙われることもなかったのに…。美妃はそう考えていたが、口にはしなかった。しかし、佳美は楽しそうに目を三日月のように細め笑っているのだ。

「さっきのヤツが狙ったのは状況から見て、間違いなくあなた」

「え…？」

　美妃の困惑ぶりを楽しそうに笑ながら佳美の真っ赤な唇がそう動いた。その横で雅臣は黙ってハンドルを握り、フロントガラスを黙って見つめている。

「…そんな、どうして」

「あたし達が現れてから、急にあなたの周りが騒がしくなった。そうよね？　それは、あいつにとって都合が悪いから、じゃないかしら」

「あいつ…？」

　全く話の見えない状況に、美妃の瞳は揺れていた。

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