もう、明日がないなら…
「そう。あなたの名は美妃ではなく、美沙だ。そしてここに眠っているのはお祖父さんだけじゃない。あなたのご両親も、そこにいらっしゃるんですよ」

「やっぱり、何か知ってるんですね…」

 美妃は、雅臣のシャツの胸元を両手で掴んでいた。

「教えてください!! 私は、誰なんですか…」

 消え入りそうな声ではあったが、彼のシャツをつかむ力は強かった。藁にもすがる気持ちで、美妃は彼に訴えたのだ。

「…そして、僕も」

 雅臣は、右手を上にあげた。

「僕、も…?」

 美妃は眉根を寄せて、聞き返す。すると、彼はうなずいた。

「僕の右手は、左手の半分くらいの力しか出せないんです」

 左手でカップを握ったり、左手で階段から落ちそうになった彼女を支えたり…
 美妃は右手を全く使わない雅臣の行動を思い出していた。

「…やっぱり」

「気付いてましたか」

 今度は美妃がうなずいた。
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