もう、明日がないなら…

「あなた、雄哉の何を知ってるの？ おそらく、あなたは雄哉と言う人間を何も知らないはず。記憶を無くしたあなたを拾って、あなただけに親切にして惚れさせた。それは、あなたの記憶が二度と戻らないように監視するため。死体の後片付けは結構大変なのよ。ならば思い出さないようにした方がいろいろ都合がいいんだと思うけど」

　佳美の発言に、美妃は眼を吊り上げ彼女を睨んだ。

「そんなの、信じない！！」

「そういうのを『洗脳』って言うのよ」

　佳美は至って冷静だった。冷静な眼で、美妃の目を射抜くように見つめていた。

「違う、違う…！」

　激しく首を振る美妃は、足元に落ちていた石に足を取られ、倒れそうなった。しかしまたそれは雅臣によって防がれた。とっさに出た右手で彼女の腕をありったけの力で掴み、自分の胸に引き寄せたのだ。