もう、明日がないなら…
五 期待
雅臣たちと別れ、美妃はひとり駅のホームを歩いていた。時刻表の横に設置されている時計を見上げると、午後零時を回っていた。
(今から屋敷に戻って、急いで支度をすれば夕方の便に乗れる…)
電車が入ってくるというアナウンスが、まばらなホームに流れてきた。その数分後、耳が痛いくらい大きな警笛を鳴らしたアルミの電車が美妃の目の前へと滑り込んできた。彼女は迷わず、その鉄の箱に乗り込んだ。
車内は混んではいなかったが、空席はなかった。美妃は迷わず閉じたドアに寄りかかるようにして立った。頭が重く、目線を落とした。
いろんなことがあったからか、頭の整理ができず、ぐったりとしていた。疲労からか偏頭痛が彼女を襲う。鼻でため息を吐き、気を紛らわすために外の景色を何てなく眺め始めるが、ズキズキと走るその痛みが引くことはなかった。
次第に脳裏には、雄哉の言葉が蘇っていた。
『あの人は俺からすべてを取り上げる天才なんだ…』
そして、さっきの雅臣と佳美との会話だ。彼らは、この一年をすべて否定した。空っぽの私は、誰を信じれば…?
(確かめなければ…)
立っているのもやっとだったが、その思いだけが彼女の体を支えていた。
(今から屋敷に戻って、急いで支度をすれば夕方の便に乗れる…)
電車が入ってくるというアナウンスが、まばらなホームに流れてきた。その数分後、耳が痛いくらい大きな警笛を鳴らしたアルミの電車が美妃の目の前へと滑り込んできた。彼女は迷わず、その鉄の箱に乗り込んだ。
車内は混んではいなかったが、空席はなかった。美妃は迷わず閉じたドアに寄りかかるようにして立った。頭が重く、目線を落とした。
いろんなことがあったからか、頭の整理ができず、ぐったりとしていた。疲労からか偏頭痛が彼女を襲う。鼻でため息を吐き、気を紛らわすために外の景色を何てなく眺め始めるが、ズキズキと走るその痛みが引くことはなかった。
次第に脳裏には、雄哉の言葉が蘇っていた。
『あの人は俺からすべてを取り上げる天才なんだ…』
そして、さっきの雅臣と佳美との会話だ。彼らは、この一年をすべて否定した。空っぽの私は、誰を信じれば…?
(確かめなければ…)
立っているのもやっとだったが、その思いだけが彼女の体を支えていた。