もう、明日がないなら…
「貧血ですよ」

 美妃が目を覚ましたことに気付いた雅臣が、部屋の隅で雑誌を広げながら冷静にそう告げた。

「なぜあなたがここに…」

 目を丸くして美妃は聞き返す。

「尾行は職業病なんです。すいません」

 雑誌を閉じ、組んだ足を直すと、雅臣は立ち上がり、頭を下げた。

「あなたが乗ろうとしていた便は、もう出てしまいましたね。確かめに行こうとしたんでしょ?」

 部屋のドアに向かいながら、彼はそう問いかけた。美妃は天井を見つめたまま黙っていた。

「先生を呼んできます」

 そう言い残して、雅臣は病室から出て行った。

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