もう、明日がないなら…
 美妃は、病院に担ぎ込まれる前まで持っていた鞄を探した。鞄はサイドボードにあり、直ぐに手に取った。そして、中に手を突っ込むと、紺色のベルベットが張られた小箱を取り出し、蓋を開けた。

 そこには、月明かりを受けてキラキラと小さく輝くあの指輪が収まっていた。幻想的なその光を眺めていた彼女は、おもむろに指輪をつまむと、左薬指にはめた。

 小箱の蓋を静かに閉めると、美妃は月明かりを背にして目を閉じた。

 明日、会えば何か解る…

 そう期待しながら、美妃は眠りについたのだった。

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