もう、明日がないなら…
 新しい病室も、さっきまでいた部屋とさほど変わらない無機質な部屋だった。無駄なものがない分、ゆっくりと時間が流れているようだった。

「君の入院は、二、三日だって、さっきの先生が言っていたよ」

 相変わらず優しい微笑みを浮かべながら、男は言った。スラリと長い腕の先にあるのは、さっきの病室に飾られていたピンクのバラを生けた花瓶だった。

「このバラ、綺麗でしょう? うちの庭に咲いていたのを生けたんだ。ピンクのバラの効果を知ってるかい?」

 彼女は小さく首を振った。

「弱った身体にエネルギーを与えるんだそうだよ」

 彼はそう答えながら、花瓶をサイドボードに置いた。

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