もう、明日がないなら…
 レストランを出て、約40分後。美妃は、その場所に立っていた。

 ヨーロッパを思わせる美しく整備された公園入口から右手に向かうと、頭の中で思い描いていた光景と重なった。

 色とりどりに咲き乱れる、バラの花。屋敷に植わっているものと同種のバラも多数ある。

 平日のせいか、人はまばらだった。きっと、展望デッキの方に行けば、もう少し人はいるのかもしれないが、これくらいの方が静かに楽しめる。よく晴れた空に向かって伸びて行くバラに生命力を感じながら、美妃はバラ園を散策していた。

 すると、また頭の中で光がさした。最初はぼんやりとしていたが、徐々にその光が強く、美妃はその場に立ち止まり、思わず目をつむっていた。

 それでも弱まらない光に耐えながら、その光の向こうをのぞこうとする。少し、勇気がいるのだ。何が見えるのか、怖かった。

 それでも目を凝らして眩しい光を見てみると、ぼんやりと誰かの後ろ姿が見えた。ふたりだ。体つきから考えて、男と女のように見える。

x
< 61 / 128 >

この作品をシェア

pagetop